「聲の形」公開直前に原作漫画で予習してみる。
聲の形が2016年9月17日に公開されます。本作は2013年から2014年にかけて、週刊少年マガジンで連載されていた漫画が原作のアニメ映画です。そんなにたくさんの漫画を読むタイプではない私が、珍しく全巻揃えた作品なので、映画化が楽しみでした。そこで、劇場公開に向けて、原作漫画を振り返ってみたいと思います。
聲の形とは
大今良時による漫画。初出は「別冊少年マガジン2011年2月号」で掲載された45Pの読み切り。続いて「週刊少年マガジン2013年12月号」にて、61Pにリメイクされました。そしてさらに「週刊少年マガジン」で連載されたという経緯があります。そんなわけで、原作漫画といっても3種類の形態が存在するわけですが、ここでいう原作とは、連載版の事を指すことにします。
なお、読み切り版はバックナンバーをプレミア価格で手に入れるしか読む手段がなかったのですが、映画公開を記念して発売される「聲の形 公式ファンブック」には読み切り2バージョンが収録されるとのこと。私も未読なので、ぜひとも手に入れたいところ。
余談ですが、この作品映像化は実は初めてではありません。道徳教材用に実写化されています。30分のドラマとしてDVDになっていますが、こちらは教育施設向けの商品のため個人が購入することは出来ないようです。
あらすじ
小学6年生の石田将也は、姉の「人生は退屈との戦い」という言葉に従い、友人たちと度胸試しに励む腕白少年。しかし、悪友たちは塾などを理由に次々に離脱していく。そんな中ある日、将也のクラスに女の子が転校してきた。転校生-西宮硝子-は耳の聞こえない、いわゆる聾者であり、母親の方針で特別支援学校ではなく通常の学校へ通っている。
退屈な日常に突然放り込まれた障がい者は、将也にとって物珍しく、彼女のことをからかうようになり、やがていじめへと発展する。補聴器の度重なる故障がきっかけで問題が発覚し、将也が糾弾される。これ以降、いじめの加害者であった将也が逆にクラスでいじめられるようになる。
クラスメイトと一緒にいじめに興じるどころか、むしろ手を差し伸べるような態度をとる硝子に苛立つ将也は、ついに彼女と取っ組み合いの喧嘩をする。これを機に硝子は転校し、将也に対するいじめは小学校の卒業式まで続く。
硝子を転校に追いやった事を小学校の同級生にばらされた将也は、中学・高校に進学した後もクラスの中で浮いた存在となる。孤立している自分のことを認めるため、さらに孤立していく彼は、自らの命を絶つ事を決意する。その前に、最後にやり残した事
- 補聴器の弁償代(170万円)を母に返却する
- 西宮硝子に謝罪する
を遂行しようと決める。バイトや身の回りの品物を処分することによって170万円を工面した将也は硝子が参加している手話サークルの会場に向かう。5年ぶりに再会した2人。将也は、「あの時お互いのこえが聞こえていたら どんなに良かったか」と手話で懺悔したあげく、勢いで「俺とお前、友達に…なれるか?」と伝えてしまう。
これ以降、2人は度々会うようになり、さらに当時の同級生や、将也が通う高校のクラスメートたちと「友達っぽい」生活を取り戻しつつある。この頃、将也の友達である永束友宏が中心になって、映画を撮影する話が持ち上がる。脚本係や衣装係等が決まり、映画作りは順調に進んで行くかに思われたが…
「聲の形」の魅力
聾者を題材にすると、どうしても「この描写はおかしい」とか「そもそもこんなのを題材にするなんてけしからん」なんて批判をする輩がいるわけだけれど、「聲の形」のテーマはそもそもそこじゃない!いや、そこについて議論しても良いんでしょうけど。
小学生時のエピソードに関しては、障害云々よりも、いじめの話。大今良時さんも関連作品を参考にしたようで、かなりリアルに描かれていると思います。いじめがあるとわかっていながらも、クラス全体を巻き込んでまで積極的に関わろうとはしない担任。「~に賛成な人、拍手~!!」とか言って同調圧力が甚だしい、完全にお花畑な先生。「いじり」だとか「遊んでるだけ」だとしていじめと自覚していない、あるいはいじめをいじめとして認めない生徒。優等生ぶって大事になって初めて「私はやめろっていったのに」とか泣き出す生徒。そして、いじめの対象がいなくなってもいじめ自体はなくならず、その対象が移るだけだという構造・・・。程度の差はあれ、誰もが経験してきた「いじめ」の姿が綿密に描かれています。
高校生になってからは、「表現する・伝えるとは何か」というのを訴える話。それは手話とか文字で伝えるというのも、もちろん含まれています。しかし、それだけにとどまらず、永束君がもともとは友情を表現しようとして企画した映画だったり、硝子の妹である結絃が「死なないでほしい」という思いで撮り続けた生き物の死骸の写真だったり…。登場人物が様々な手段でそれそれの思いを伝えようとする中で「伝わらない」じれったさを感じていく様を見て、どこかしら共感できる場面があると思います。
そんな登場人物が各々持っている不器用さというのが、かなりデフォルメされたキャラクターとして作り込まれていて、そこが魅力的だなあと思います。思った事を言葉と行動ではっきりと「表現している」のにも関わらず、周りになかなか「伝わらない」植野直花なんかは、個人的に結構好きなキャラですね。
まとめ(ファンブックはおすすめ!)
映画公開を機に再び単行本を読み返しているのですが、やっぱ良い作品だなあと思います。たぶんね、映画館で私、泣きますよ。(まあ、映画館における私の涙腺決壊の基準が緩すぎるというのもあるのですが。なんならプリキュアでも泣けるw)
何の情報も入れず、まっさらな状態で映画を観られる人はそれはそれでうらやましいのですが、せっかくなので、原作の方も手にとってみてはいかがでしょうか。電子書籍版は1巻(小学時代のエピソード)が無料のようなので、映画鑑賞前後、どちらでも良いので読むことをお勧めします。
あと、冒頭にも書きましたが、読み切り版が収録されているファンブックは絶対に欲しい!私も週末に本屋行ってきます。